2006年01月12日

アニスの実の酒

昨晩はゆっくり湯船につかりたかったのでまっすぐ帰るはずだった。
しかしどうしても天狗男さんからの返事を確認したくて紅茸天狗へ赴いてしまった。

紅茸天狗に到着するとバーテンのいつもの「いらっしゃいませ」という明るい声。
女店主はあいかわらずぼそりとつぶやくだけ。
あの一件があってからもこの2人の態度は変わらない。

店は空いていたので私はいつものように一番奥の本棚に近い席に腰をおろした。
「異邦人」は読み終わっていたので、何か新しいものを見つけるためメニューリストを開いた。
斜め読みでざっと目を通してるだけだったが、私はそこで驚くべき本を発見した。
「アニスの実の下で」月鎮季里子(つきしじきりこ)
月丘花林の「ろうあ者の遺言」の右隣にそこにあるのが当然かのごとく並列されている。
「アニスの実の下で」は「異邦人」に出てきた小説だ。
そして作者月鎮季里子はその登場人物。

私はためらわず「アニスの実の下で」を注文した。
バーテンはいつもと変わらぬ様子で本を渡してくれた。
表紙も「異邦人」に描写されてた通り若い女性がもう一人の女性の髪に口づけをしている絵だし、内容も全く同じだった。

小説を半分以上読んだとこで時計を確認すると残り時間わずか30分だった。
あまりに夢中に読んでいたため出された食事にほとんど手をつけていなかった。
本を閉じ慌てて食事をかきこんだ。
そしてゲストノートをめくった。

「紅茸子様

そんな悲観的になることないですよ。
確かに電球は暗闇を深くしたかもしれませんが、電球が発明されたことによってそれまで見えなかったものが見えるようになったのも事実です。
それに「闇が深くなった」のではなく、「闇は深い」という事実に気付いただけです。
そして自分がそれまで平気でそんな深い闇にいたことが信じられなくなりもう過去の自分には戻れない、戻りたくないと思い始めるのです。

成長とはある意味それまでの自分を捨てることです。
もう戻れない自分自身を羨んでも仕方ないのです。
あなたは望んで傷つき、悩み、苦しむという道を選択したのです。
それによって得た喜びもあるでしょ?
そしてそういった喜びは闇を知った分だけ大きいはず。
茸子さんははそれを求めて走り始めたのではないですか?

天狗男

追伸:あなたの今夜の運勢→玄関マットにご注意」






店を出てあたりを確認してから入り口に敷かれたマットの下をのぞいてみた。
案の定白い紙切れが忍ばされていた。

「紅茸子様

暗号に気付いていただけて何よりです。あなたもやはりあの2人に興味を持ったのですね。
ここの客は多かれ少なかれ彼らに興味を抱いてるはずです。
この店自体に不思議なことがたくさん散らばっているのだからそれを切り盛りする彼らはいったい何者なのだろうと。
私も前々から気になっていましたが、なんせずぼらな性格なもので探偵みたいなまねはできません。でもわずかながらあなたの力になれたらと思います。
ただ、今の時点で私が彼らについてしっていることは2つしかありません。

1、バーテンは独学でカクテル作りを勉強した
2、女店主は決して生魚介類の料理を出さない

1については彼から直接聞いたことです。今では人相でその人がどういった酒を好きなのかがわかるそうです。
2、はここの常連だったら気付いてるかもしれませんね。
この程度しか知りません。また何か情報を得たらお伝えします。

天狗男」
posted by pikkumyy at 20:17| Comment(5) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これまで皆さんの発言を聞いて気になったことをまとめておきます。
1、なぜ雪子さんはしきりに手を気にして  いたのか。本当にみかんの食べすぎな
  のか
2、普通に話す時は話すのになぜ普段はあ  んなに愛想がないのか
3、普段の生活はいったいどうなってるの
  か
4、なぜワインは赤しか出さないのか
5、バーテン(彼にも呼び名つけた方がい  いですね。猪鹿鳥からとって猪吉さ
  さん)はお酒を独学していつどこで雪
  子さんと出会い、紅天で働くことにな
  ったのか
6、ハンチングマンは雪子さんとどういう
  関係なのか

ここらへん少しずつ解明できたらと思います。今日は眠くなってしまいました。おやすみなさい。
Posted by at 2006年01月12日 22:11
紅茸子さん

お疲れのようだ。
ゆっくりあったかいおふとんの中でおやすみなさい。
茸子さんがまとめてくれた内容に少し推察を

1、なぜ雪子さんはしきりに手を気にしていたのか。
本当にみかんの食べすぎなのか。
⇒左手の薬指に指輪の跡を見た人も多いはず。彼女は別れた夫がいたのか、それとも別れた男を思い出しているのか…
または本当にみかんが好きなのか。

2、普通に話す時は話すのになぜ普段はあんなに愛想がないのか。
⇒猫的性格?。今までの話を総合すると彼女の関心に触れたときに話をしているようだ。

3、普段の生活はいったいどうなってるのか。
⇒オフレコだが、自分のことを「こたつむりなのよ」といった伝説もあるようだ。

4、なぜワインは赤しか出さないのか。
⇒白は自分を染める、染めて欲しいというメッセージも含んでいる。赤しか出さないのは私は私という、意思の表現か、または染めて欲しいという逆説的な意思なのか。

5、バーテン(彼にも呼び名つけた方がいいですね。猪鹿鳥からとって猪吉ささん)はお酒を独学していつどこで雪子さんと出会い、紅天で働くことになったのか
⇒猪吉さんは、うだつがあがらない風情。どう贔屓目にみても雪子さんの好みって感じ、じゃない。逆にその安心感がやっとっいる理由かも。でもこの人のセンスは抜群だ。ちゃんと仕事ぶりを見る目は雪子さんならでは。どこで彼を見つけてきたのか。
でも、以外や以外夫婦という線も消せない。

6、ハンチングマンは雪子さんとどういう関係なのか
⇒昔なんらかの関係があったことは間違いない。雪子さんを守ろうとあの世から戻っているのか、または本当のひもか。はたまた弟かもしれない。


まだまだ、推察の域を出ていないが輪郭ができてきたようですな。明日は週末、紅天に行ってみますかな、みなさん。

ここらへん少しずつ解明できたらと思います。今日は眠くなってしまいました。おやすみなさい
⇒おやすみなさい、茸子さん。
Posted by 湖南 at 2006年01月12日 22:44
この本読むとき、アがぺに見える私変?
Posted by 人妻コメット at 2006年01月12日 22:47
変ですね。
Posted by 隠れキリシタン at 2006年01月12日 22:47
雪子さんが本当にみかん好きだったら愛媛出身の可能性が高いと思います。指が黄色くなるくらいということは相当量食べてるはず。そんなに食べれるのは幼少時からみかんを食べ慣れた人くらいです。私の愛媛出身の祖父もみかんの食べすぎで黄疸になったことがあります。
あるいは食べたのではなく料理に使ったのかしら。

人妻コメット様

あなたらしくて素敵
Posted by 紅茸子 at 2006年01月13日 05:23
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。