2006年01月08日

謎の男

女店主とハンチング男のことが気になって、昨晩遅くに紅茸天狗へ向かった。
結構な時間だったので客は私の他に一人だった。
その人も私の飲み物が出てくる頃にはお会計を済ませていた。

赤ワインを一口飲み、女店主の方をうかがった。
私の斜め右でいつも通り何か作業をしている。
バーテンは店の奥へ行ったのか店内を見渡してもいなかった。
思い切って女店主に話しかけてみた。
「あの・・・」
女店主は手を止め顔だけ私の方に向けた。
初めて彼女と目を合わせた気がする。
声をかけたはいいものの、何から話せばいいか混乱し軽いパニック状態にあった。
女店主は私の目をひたと見つめている。
首を90度ひねってこちらを見続けてるその姿が、「エクソシスト」の悪魔にとりつかれた少女を思い起こさせた。
(あの子の首は180度曲がってたけど)

前置きなどをぐだぐだ喋っても相手にされなそうだったのでずばり本題から入った。
「以前ハンチングのサングラスをつけた男性がこちらに来たことがありますよね?」
女店主の迫力に圧倒されて「ハンチングのサングラス」なんて変な言葉が飛び出てしまった。
「年齢は40か50代くらいに見えました」
そういえば彼女の年齢はいくつだろうか。検討がつかない。
年齢不詳とはまさに彼女のことだ。
彼女は私から目線を外し、ささっと手を動かしてから体ごと私の方へ向いた。
私の前まで来ると美味しそうなサラダをカウンターに置いてくれた。
ようやく彼女が口を開いた。
「で、それが何か?」
初めて彼女の声を聴いた。
『誰ですか?』なんて直接聞いたら怪しまれると思いとっさに嘘をついた。
「いや・・・私の知り合いに似てるなーと思って」
女店主は何も答えずただ私を見ていた。
「実はその人ちょっと前から行方不明で、捜索願も出されてるんですよ・・・。だからあの人のこと何か知ってたら教えていただきたいと思って」
その時バーテンがカウンターに戻ってきた。
女店主は何も答えない。
沈黙と女店主の視線に耐えられなかった。
「あの」
それを遮るように彼女は口を開いた。
「当店では、お客様の私的事柄を他の人間に口外することは一切いたしません」
それだけ言って定位置へ戻っていった。
バーテンがちらっと私に目を向けた。
2,3分の短い会話だったが、長距離走と面接試験を立て続けにやったくらい疲れた。
そして心臓が押しつぶされそうだった。

本を読む気力にもなれなかったので食事だけして退散した。
私が出ると同時に店じまいだったらしく、バーテンも出てきてドアノブの札を「閉店」に変えた。
何も収穫がなかったことにがっくりしつつ階段へ向かっていると、後ろからバーテンの声がした。
「あの男をあなたがご存知のはずありません」
私は驚いて振り向いた。
「あなただけじゃない。他の人間もあの男と知り合えるはずないんです」
それだけ言うと店の中へ戻ってしまった。
私はただ呆然としていた。

誰も知ることができない男。
でも少なくともあの2人は知ってる。
どういうことだろう。
謎が深まってしまった。





posted by pikkumyy at 08:57| Comment(9) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
紅茸子さん

びっくりだ。直接聞いちゃうんだから、心臓パクパクってやつね。でもわかったことは誰も知らない人ってことか。とすると次の3つが推理できそうだ。どうだい、茸子さん。どう思う?@訳あって長い間入っていて最近出てきたA他の人に知られるとまずいお尋ね人Bこの世の人でない
Posted by ひょうたんから駒 at 2006年01月08日 09:26
絵はがき坂様 

好み→基本的にはオバケのQちゃん
理想→「デビルマン」の飛鳥了
チョコレートさんとはいったいどんな人ですか?
これまた融点低そうですが。

ペリカン様

都内某所勤めのOLとだけ言っておきます。
紅天仲間は謎な方が快適でしょ(笑)

Posted by 紅茸子 at 2006年01月08日 13:31
紅茸子さん

興味深いレポートだ。私も紅天に登場させてもうことにしたよ。
紅茸子さんこれからもよろしく。職業欄には一応探偵事務所職員兼所長と書きこんでいるが不況でね、いろいろやってます。
自己紹介はこれくらいにしてさて本題。
そりゃ誰だって「ちょっと前から行方不明で、捜索願も出されてる」なんて唐突な聞き方されたんじゃこれは迂闊に答えられんでしょうな。それにしても女店主もそっけない。困ってる人がいるかもしれないんだからね。でも女店主はそんな情が薄い人じゃないのは皆さんご存知の通り。と、いうことは事情をよくよく知っていて紅茸子さんが”かま”をかけていることを見抜いたわけだ。さて、バーテンが言っていた「誰も知り合えるはずがない」ということと「誰もが見ている」ことの矛盾も謎を解く鍵だ。ひょうたんから駒さんがいうように、わけあり君で説明ができないか、足なし君かもしれない。でも靴音が聞こえたという茸子さんの証言もあるし。
うむ、ひょっとして天狗男さん?
Posted by 湖南 at 2006年01月08日 13:43
紅茸子さん

おばけとデーモンがお好きなんですね。これはチョコレートさんと合いそうですよ。彼は甘いようで結構ビター味。今度機会を見つけて紅天に連れていいきましょう。
ちなみに、チョコレートさんと以前好きなタイプの話をしたことがありますが彼は「パーマン3号」っていってました。

Posted by 絵はがき坂 at 2006年01月08日 14:28
舞茸様 ひょうたんから駒様

書き忘れました。私昨晩福袋見たんです。店に入る時カウンター内のすみっこに置いてあるのが見えました。中身もちょっと見えたんです。あれは多分きのこです。
なんであの男は女店主にきのこの福袋なんて渡したのでしょうか。
もしかして店名とも関係あるんでしょうか・・・。

湖南様

バーテンが言ってた「誰も知り合えるはずがない」という言葉は、見るとか聞くとか知覚することができないのではなく、知り合いになることができないという感じに聞こえました。
紅天ではしばしば不思議なことが起きるようですからひょうたんから駒さんのいうBの可能性も高いですよね。
Posted by 紅茸子 at 2006年01月08日 14:50
紅茸子さん

そのきのこは何だったでしょうか?とても重要ですよ。それとBの可能性を詰めていくことにしましょう。謎の男が現れる時間とか月の出方とか見れる人、見れない人。しかし、その前にしておかなければならないのは、この謎を解いていくと女店主のとても辛い過去にトリップしていくかもしれないということを我々は覚悟せにゃならないということですな。
Posted by 湖南 at 2006年01月08日 15:00
紅茸子さん

あらぁいやだ、それって、女店主が松茸がないと生きられないってこと?
Posted by 人妻コメット at 2006年01月08日 15:06
人妻コメットさん

松茸にこだわらないほうがいいんではありません?舞茸だって紅茸だってしめじだってあるんですもの。でも紅茸子さん、わからなくなってきたわ。きのこがはいっていただなんて。とてもお使いに行ってきましたってかんじぢゃなかったもの。
Posted by 舞茸 at 2006年01月08日 15:12
紅茸子さん

前々から謎だった「紅茸天狗」って店名、するどいとこ突いてくるね。結構いい線いってるかも。ペリカンさんに返信してくれてたけど、茸子さんOLだったんだね。堅気やってんだ。デザイナーとかさ、ひょっとしてモデルかなとも思ってたんだ。俺が紅天で見つけた結構イケテル、かっこいい人がね紅茸子さんかなと思ってたんでね。OLだとちとちゃうかな。
Posted by ひょたんから駒 at 2006年01月08日 15:25
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