2006年06月29日

ティオ・ダンジョウ

年に一度の逢瀬と云えばもうすぐ七夕。
一年がめぐるのは早い。
今頃織姫と彦星はさぞかし7月7日を前にして浮き足立ってることだろう。
紅天にも短冊が吊るされた笹が飾られるようになった。

雪子さん「はいこれ。願い事書いて笹に吊るしてください」
  水色の短冊と筆ペンをくれた。
  願い事はたくさんあるので厳選するのに多少もたついたが、
  ようやくさらさら筆を走らせると
猪吉さん「こちらもどうぞ」
  差し出されたのは短冊と同じ大きさくらいの人型の紙だった。
私「なんですこれ?」
猪吉さん「そちらの短冊にはあなたの願い事を書いていただきましたが、こちらには誰か他の人のための願い事を書いてください」
私「他人のための?そんなの初めて聞きましたよ」
法華爺「情けは人の為ならずじゃよ」
  え、蛇々丸!?やけに老成しちゃって、見た目まで老けたような・・・。
  どうしよう。誰の願い事書けばいいだろう。
  と悩んでいると新しい客が入ってきた。
雪子さん、猪吉さん「いらっしゃいませ」
  あれ、あの人見たことあるけど誰だったかな・・・
  男の客は席につき、雪子さんと談笑を始めた。
  猪吉さんが生ビールを差し出すと
男性「明日死ぬほど生ビール飲むからさ、それあんた飲んで下さいよ」
  猪吉さんはすすめられるがままに生ビールを飲み干し、新しい酒の用意を始めた。
  あ、思い出した。いつかの陽だまりの笑顔の人だ。
  陽だまりの君とでも命名しようかしら(私の中で)。
  紅天の常連ぽいけど私はあまり見かけない。
  私があまりにじろじろ見ていたから気付いたらしく目が合ってしまった。おっとっと。
  苦笑いで軽く頭を下げると、あの笑顔で微笑み返してくれた。
  わ〜!!!
  ほんとはじめじめ暑い晩だけど、ポカポカ心地よい小春日和をいただいた感じ。
  人型の短冊にはこう書いた。
  『陽だまりの君がどこかで死ぬほどビールを飲んでも、紅天でももう一杯飲めるくらいの健康を失わない幸せな梅雨を過ごすことができますように』
  
<今日の食事>
恵比寿 ティオ・ダンジョウより
●マッシュルームの鉄板焼き
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●スペインのポテトオムレツ
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●カジョス(牛胃袋の煮込みマドリッド風)
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●ニシンの酢漬け
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●イカ墨のパエリヤ
●赤ワイン(RAMON BILABAO)
●シェリー(マンサニージャ・ラ・ヒターナ)

<今日の本>
「銀の雨」宇江佐真理

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2006年06月24日

クンビラ

夏至も終わり、本格的な夏が始まろうとしている。
生き物達が身を寄せ合い、お互いの熱を欲しあう密度の濃い季節はとうに過ぎているが、これから来る世間が浮き足立つ真夏はなぜか紅茸天狗には似合わない。
世間一般のちゃんこ鍋屋や、おでん屋は夏用のメニューや店内の模様替えで、夏にそぐわぬ暑苦しいイメージを払拭することに懸命になることだろう。
紅天は濃すぎる空気を残したまま、夏へと向かう人々から遠ざかっていく。
置き去りにされるのはむしろ紅天の方だけれども。

そんな淋しい季節の訪れを、外とのひずみを、誰が口にするでもなくしかし誰も感じていた昨晩の紅天。
皆言葉もなく、グラスを傾けたり、雪子さんの料理をフォークでつついたり、ずっと同じページのままの本を眺めていたり、一様にぼんやりしているようだった。
私も頬杖をついて何を考えるでもなしに壁にかかったマグリットの『心の琴線』を眺めていた。
確か先月は『恋人たち』が飾られていたような・・・マグリットは雪子さんの趣味なのだろう。
そういえばこの絵、よく見るときのこ雲にも似てる。
ふと気付くとBGMは『灰色の瞳』だった。

  なんて寂しいこの夕暮れ
  届かない思いを抱いて

  私の大事なこの笛の歌う歌を

  あなたは聴いているのだろうか

  何処かの小さな木の下で
  
  山は夕暮れ夜の闇が忍び寄る

  あなたは何処にいるのだろうか

  風の便りも今は途絶え

  あなたは何処にいるのだろうか

<今日の食事>
恵比寿 クンビラより
●豆腐パルンゴ
 (豆腐と石臼で挽いたホウレン草とネパール高地で採れる香草をやわらか  く和えたお料理)
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●スプリングロール(チベットの野菜春巻き)
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●チャウチャウ(チベットの焼きそば)
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●チャン
●赤ワイン(イタリア)

<今日の本>
「ニシノユキヒコの恋と冒険」川上弘美  
  


ピエール・ロワ
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2006年06月21日

美ら島

いつもの通り紅天にやってくるとドアに張り紙がしてあった。
『屋外パーティー実施中 興味ある方は地図に従って会場までいらしてください』
ドアノブに下げられた袋の中に地図が入っていた。どうやらちょっと行ったところの川辺が会場らしい。
地図に従って歩いていくと、森にたどりついた。暗がりの中目を凝らすと細い道が森の中へ続いている。
そのまっすぐな小道を歩き始めてすぐ、川のせせらぎの音と、ぱちぱちと何かが燃える音が聞こえてき
目の前が明るくなった。
土手で、キャンプファイヤーのようなものを囲んで皆が団欒していた。
雪子さんが私に気付いてくれた。

雪子さん「あー、やっと登場ですね。こっちこっちですよ〜(手を振って)」
私「わー。すごいですねこの焚き火」
  焚き火というにはあまりに大きい炎だった。巨大クリスマスツリーくらいありそうだ。
雪子さん「コッコというんですよ。北欧の夏至祭では湖のほとりで焚くんです。その周りでおしゃべりしたり、ごはんを食べながら真夜中まで過ごすんです」
私「(大きなかがり火を見上げて)へー」
猪吉さん「はい。ワインどうぞ」
私「ありがとうございます。こんな大きい炎見たの小学生の時のキャンプファイヤー以来です」
ハンチ「マイムマイムと踊るんだよな。いっちょみんなで踊るか!」
蛇々丸「夏至祭は神聖なものだから僕たちは大きな音立てたり、騒ぎすぎたりしてはいけないんだよ。きゅいきゅい」
ハンチ「なんだいお前。つまらねえことばっかり知ってやがる。せっかくそんななりしてんだから川で泳いでこい」
蛇々丸「いやだよいやだよ。僕はここでじっとしてるよ。ねえはんちゃん、蛇ママ、ほら見てみなよ。コッコの周り。いつもは姿を見せない小さな生き物が踊っているんだよ」
ハンチ「小さな生き物?なんでそいつらだけ騒げるんだよ」
雪子さん「彼らはとても臆病だから、普段私たちが大きな音を立てている時は物陰にひっそり隠れて姿を見せない。でもね夏至の夜はコッコからパワーをもらった彼らが騒ぐ番なのよ。今日ぐらいは彼らを驚かせないようおとなしくしててあげましょう」
×        ×           ×
雪子さん「あら、もうお帰りですか?」
私「ええ。今日は珍しいもの見させていただきありがとうございました」
雪子さん「最後にこれだけはやってもらわないと。女の子にとっての一大イベントなんですよ」
私「一大イベント?」
雪子さん「そこらへんに咲いてる花を七種類摘んでください。違う種類のを」
私「7種類。はあ」
  川原にはたくさん花が咲いていたので七種類あっという間に摘み終えた。
  紫陽花、南天、犬四手、三つ葉、金糸梅、ナスタチューム、ホタルブクロ
私「摘みましたよ」
  雪子さんに花を渡すと赤いリボンでブーケを作ってくれた。
雪子さん「これを今夜枕の下に置いて寝てください。今夜夢に現れた人があなたの運命の人です」
私「え!?本当に現れるんですか?」
雪子さん「ええ。楽しみですね」
  楽しみだけど、ちょっと怖い。今日は寝付けなそう。。。
ハンチ「(ヘビコに)おいお前去年やってたじゃないか。そんときおいら現れたんか?」
蛇子「(舌をれろれろして)モクヒケンヲコウシスル。モクヒケンヲコウシスル。モクヒケンヲコウシスル」

<今日の食事>
池袋 沖縄だいにんぐきっちん美ら島より
●ジーマミ豆腐(落花生の豆腐)
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●海ぶどう
●ぐるくんの唐揚げ
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●アーサいり海老オムレツ(アーサ→岩海苔)
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●もずく入り島餃子
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●鶴梅すっぱい(ロック&ソーダ)
●黒糖梅酒(ソーダ割り)
●黒糖焼酎 里の曙(ロック)
●生レモンサワー

<今日の本>
「堕落論」坂口安吾

  
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2006年06月17日

ぶるだっく

今日の紅天は変な噂で持ちきりだった。

客A「ききました?あの話?」
私「なんです?」
客A「あら、まだご存知ありませんの。あなたもぐりね」
私「いえモグロです」
客B「そんな冗談言ってる場合ではありませんよ茸子さん。大きな声では言えませんが(カウンター内を確認してから、人差し指をくいくいとして顔を近づけるよう促す)」
私「なんですか?(耳を客Bの方に近づける)」
客B「雪子さんがずっと寝込んでいた理由ですよ」
私「(怪訝な面持ちで)え?ご存知なんですか?」
客B「知らないのはあなたくらいですよ」
私「やはりそうですか。インフルエンザも流行が終わった頃かかってました。サッカーもWCが終わるころようやく興味が湧いてきます。きのこヨーグルトも最近始めました・・・」
客C「茸子さん、きのこヨーグルトは世間ではもう廃れていますがここ紅天ではきのこサッカーについでブームですぞ。ブーム!」
客B「しぃ!(人差し指を口に当てる)そんなことはどうだっていいのです。問題は・・・」
私「今日の雨です・・・。どうしましょう。傘がないんです。だってだって最近天気予報当たらないじゃないですか。今日は梅雨の晴れ間と言ってたくせに!」
客C「茸子さん、私もそれは薄々感じておりました。そしてこういう推理にいたったわけです。気象庁とビニール傘製造会社が共謀して日本国民を陥れているのではないかと!」
客B「あんたいい加減にせい!」
客AC「しぃっ!」
客B「おっと!(口元に手を当て雪子さんと猪吉さんの様子を横目でちらり)」
私「ごめんなさいごめんなさい。それで雪子さんが寝込んでた理由はなんなんですか?」
客B「こほん(声を潜めて)人面瘡ができたらしいのです」
私「えええぇぇぇ?」
   どっかで聞いたような話だ。
客A「茸子さん、復帰してからずっとスカーフ巻いてるでしょ。何キャビンアテンダント気取ってるのかと思ったら、首元にその跡があるらしいのよ。見た人がいるんですって」
客B「その人の話によれば既に隆起はないものの、人の顔のような赤い跡が残っているそうです。よく西洋の絵本で見られる顔のある満月のような」
   もしかして古賀さん!?

<今日の食事>
渋谷 ぶるだっくより
●ぶるだっく
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●チーズトッポッキ
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●包み野菜の盛り合わせ
●ぬるんじ
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●冷麺
●生レモンサワー
●チャミスル

<今日の本>
「ある閉ざされた雪の山荘で」東野圭吾
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2006年06月14日

ローマイヤ ローマイヤ

久しぶりに雪子さんが店に現れた。

雪子さん「皆さんご心配おかけしました。申し訳ございません」
ハンチ「姉ちゃんどうしたんだよぉ。随分寝込んでたみたいじゃねえか」
雪子さん「ごめんごめん。インフルエンザよインフルエンザ。今季節外れにもはやってるのよ」
蛇子「キョウモジュウジマエヘイテン?」
雪子さん「え?」
蛇々丸「一昨日は日本戦あるからって10時前に閉店だった。きゅいきゅい」
雪子さん「あら、そうなの?(猪吉さんをじろりと見る)」
猪吉さん「(苦笑しながら頭をかいている)」
雪子さん「まあ、私がいない間一人で頑張ってくれたみたいだし、それくらいのご褒美はあげないとね」
猪吉さん「ありがとうございます」
蛇々丸「ねえねえおばちゃん、この前僕子供電話相談室を聴いてたんだ」
雪子さん「うん」
蛇々丸「そこでね、小学校1,2年生の男の子がこんな相談をしていたの。『僕のクラスにクラスメートをいじめるこがいます。僕がやめろと言っても言う事を聞いてくれません。どうしたらいいですか』」
雪子さん「うん」
蛇々丸「そしたらね、初めに答えてくれた相談員のおじちゃんは『う〜ん、そうーか、へー、ふーむ、なるほどー、その答えはねえ、ハンムラビ法典に書かれているんだよぉ。目には目を歯には歯を。知ってるかな?いじめられてる子はやり返さないからいじめられるんだから、一発殴られたら二発殴り返してやるくらいじゃないといけないんだ。その子にそう教えてあげないさいね』というアドバイスをしていたよ。僕はね、次の子供電話相談室で『あのおじちゃんはあんなこと言ってましたがそれは本当に正しいのですか』っていう電話をしようと思うんだ」
ハンチ「けっ、おい蛇々丸、何が正しくて何が正しくないなんてなー、決められるやつなんかいねーんだよ。んなん電話するだけ電話代の無駄だぁ!やめろやめろぉ!」
蛇子「ヤメナサイハンチャンヨッパラッテ」
   蛇こもたまにはまともなこと言うんだ。
雪子さん「一発殴られて二発殴れとはハンムラビ法典にも書いてないだろうしそれは間違いだわよ。それにね、私はハンムラビ法典には詳しくないけど、あれを書いた人は因果応報ということを言いたかったんじゃないかしら?わかる?因果応報?」
蛇々丸「過去の行いに応じて現在の自分の幸不幸が決定されるということでしょ」
猪吉さん「やっぱ賢いね君は」
蛇々丸「きゅいきゅい。それくらいは生まれつきの知識だよ」
雪子さん「目には目を、歯には歯をという考えは、やったらやり返せという意味で捉えられてるけど、本来は悪いことをしたらそれ相応の罰が与えられますよ。ということだったんじゃないかしらね」
   たしかにたしかに。雪子さんいいこと言うじゃない。
雪子さん「私が病気になったのも何かいけない行いをしたからなんだわ」
蛇々丸「そっか。わかった。それじゃさっきの質問はもううしない。僕にはもっといっぱい疑問があるんだ」
ハンチ「なんだまだあんのか」
蛇々丸「うん。こういう質問するの『かっこうの子供は自分がかっこうだとわかってるのですか?気付いていないならいつから托卵しようと目論むようになるのですか?』って」
   タクラン?何それ?

<今日の食事>
日本橋 ローマイヤ
●オードブル
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●ドイツチーズ盛り合わせ
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●生ソーセージのレンズ豆煮込み
●ローマイヤ特性ドイツサラダ
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●にしんのマリネ
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●ローストアイスバイン
(香味野菜とワインでじっくりやわらかく煮込んで焼き上げた豚肉のスネ肉)
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●赤ワイングラス(ビノ・ジョイエ・ロッソ(イタリア))
●オルデスローエ・コルン ロック(ドイツ焼酎)
●シュリヒテ・シュタインヘーガー ロック(ドイツジン)

<今日の本>
「満月の夜、モビイ・ディックが」片山恭一


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2006年06月10日

鯛家

雪子さんの体調はまだ回復しておらず、猪吉さんが一人忙しそうにカウンター内を動き回っていた。
私は今日も天狗男さんの弟のとなりにすわることになった。
男はサンザシ酒をちびちび飲んでいた。この男はちびちびとしか酒を飲まないらしい。
22時の茸子さんが現れてから気持ちが落ち着かなくて、今日は紅天ですっきりしようと思っていた。しかしこの男がいるとどうも落ち着かない。

男「茸子さんはあのマロングラッセ食べた?」
私「いただきましたよ」
男「どうだった?森の幸福は?」
私「・・・なんでそんなこと」
男「ふふ。まるで本当に、あの本から取り出してきたような味だったね」
私「・・・」
男「あれは何年もののマロングラッセかな?」
私「うーん、雪子さんはそんな前から栗を漬け込んでたわけじゃないと思う。だってあの本が出版されたのが2000年入ってからだし、せいぜい1,2年じゃないかしら」
男「そうかな。もっと深いと思わなかった?森の幸福を2,3年で作れるのかな」
  マロングラッセのことはよくわからないけど、梅酒などを考える確かにあの味は10年ものに近いような・・・。1,2年じゃ出ない味だ。
私「でもやっぱ採算合わないし、1,2年よ」
男「ふふ。茸子さん、あなたもうここに半年通ってるんだろ。わからないかな。常識が通じる場所じゃないって。次元が違うんだ」
蛇々丸「じゃあ四次元ポケットちょうだいよ」
男「法華爺、いつのまに来てたんだ?」
   法華爺って呼んだ!
蛇々丸「蛇ママが今日は一人で行けって。ハンチと秘密会議があるんだって」
男「それでお前が邪魔だったのか」
蛇々丸「きゅいきゅい」
   なんで蛇々丸はハンチのことパパと呼ばないんだろう。やっぱり蛇子はマリア様だったのかな。
   確かに常識通じるとこじゃないな。半魚人の子供がうろちょろしてるの見ると。
   蛇々丸はきゅいきゅい言いながら端っこの席へ行ってしまった。
男「(パイナップルジュースを飲んでる蛇々丸を見ながら)四次元ポケットは無理だけど、七色のきのこも同じくらいすごいものだったんだ」
   四次元ポケットと同等!?そんなすごいものを気前よく柏餅に入れたなんて。
男「茸子さん、あのマロングラッセはね、ほんの2,30分のたまものだよ」
私「え?」
男「1日すら経ってない。それでもあの味は本物の森の幸福」
私「そんなまさかあれは2,30分の味じゃないわよ。そんなのスーパーで売ってるモンブランのマロングラッセより即席じゃない。あんなものより千倍奥深い味だったわ」
男「あるものの魔法のひとふりで、彼女は本物と同じ偽者を作り出せる」
   そういえば私たちが紅天で食べているもののほとんどは紅天オリジナルではないんだ。
   あるものってなんだろう。それを使えば22時の茸子さんも作れるのかな。

<今日の食事>
ゑびす 鯛家より
●元祖ポテトサラダ
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●カニとチーズの春巻き
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●きのこ巻き
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●海鮮シチューコロッケ
●牛ポン酢たたき
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●グレープフルーツサワー
●レモンサワー
●ライムサワー
●赤ワイングラス

<今日の本>
「受難」姫野カオルコ



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2006年06月07日

PAZOO X

今日の紅天に雪子さんの姿はなかった。

猪吉さん「咳が止まらなくなってしまったようで・・・」
私「風邪ですか?ちゃんと病院は行かれたのでしょうか?」
猪吉さん「病院嫌いですからね(苦笑)」
私「あらら」
猪吉さん「保険証も持ってないし(ぼそり)」
私「え?」
猪吉さん「いえいえなんでもありません」
   保険証持ってないと言ったわよね?
私「だから、お薬も自分で作ってるんですか?薬効茸を入手していると聞きましたよ」
猪吉さん「ええ。そうです。病気になった時は自分で煎じた茸や陳皮を飲んでいます。漢方薬みたいなものですね。私も風邪を引いたとき少し分けてもらいましたが、これがなかなかどうしてすごい効き目。漢方薬というと普通即効性はありませんが、彼女が作るものは違うんです」
私「魔法の粉でもお持ちなのかしら」
猪吉さん「なんでもありですからね」
私「あ・・・やっぱりね」
   蛇子が蛇々丸を連れて現れた。
猪吉さん「いらっしゃいませ」
蛇々丸「今日おばちゃんは?」
猪吉さん「具合が悪いので寝てます。今日は私が料理も作っています」
蛇々丸「がんばってね」
猪吉さん「はい。ありがとうございます」
   蛇子にモッキンバードを、蛇々丸にホットチョコレートを出すと猪吉さんは料理に取りかかった。
   猪吉さんの料理は初めてだったので、どんなものが出てくるかと思ったら雪子さんが出すような料理だった。味もそっくり。
猪吉さん「これのおかげです(大学ノートを取り出す)紅茸天狗レシピ集です」
   虎の巻があったか。
私「あの、また話むし返してすみません。あの七色の茸も薬効茸だったのではないですか?」
猪吉さん「・・・さあ・・・わたしにはわかりません」
   蛇子がこっちを見ている。
私「あれはとても貴重な茸だと聞いたことがあります。なぜ彼女はそういう茸を半ば遊びで柏餅なんかに入れたのでしょうか。彼女は、殊茸に関しては一つの新年を貫いてる方だと思ったのに」
蛇々丸「世の中よ道こそなけれ思ひ入る 山の奥にも鹿ぞ鳴くなる」
   何いきなり?この子本当に法華爺?
猪吉さん「はい。デザートですよ」
   白い皿に薄くスライスされた黄色い果物のような物が並べられている。
   話の骨を折られたことに少し苛立ったが、すぐにそのデザートに釘付けになった。
私「これは?」
猪吉さん「今日の献立に書いてあったデザートです。マロングラッセ」
私「マロングラッセ・・・」
   偶然にも私が読んでいた「森のなかの海」に頻繁に登場するお菓子だった。
私「いただきます」
   おそるおそる口に運んだ。 
まさか、まさか、まさか・・・
   口に入れた瞬間、私にはわかった。
   確か、主人公の希美子はこう言ったのだ
私「森の幸福が、口いっぱいに拡がる・・・」
猪吉さん「(微笑んで)はい」

   私は本を読んだに過ぎないのだが、不思議なことにマロングラッセを食べた瞬間私は既にこの味を知っていた。
   しかし味覚を通さず言葉と己の想像だけで味の真理を知ることは不可能だ。
   あれはとても不思議な感覚だった。
   栗を口に含んだ瞬間、私の舌は希美子の舌と重なっていたような気がする。
   それでも味覚以外のものは私自身のものだから、知っている味なのに初めての味であると認識していたのだ。

   あの物語のマロングラッセを私はずっと食べたいと思っていた。
   森の幸福を舌で感じるとはどういうことか体験してみたかった。
   物語ではマロングラッセを作った老女は亡くなってしまい、その作り方は謎のままだった。
   砂糖ではなくアカシアの蜂蜜と、カナダ産の最高級メープルシロップが使われていることは明らかになったが、その割合と使われているスパイスは最後まで解明されなかった。
雪子さんはどうやってこのレシピを解明したのだろうか。
猪吉さん「このマロングラッセはあの方から皆様へお詫びのしるしだそうです。ここのとこずっと身体的にも精神的にも本調子ではなかったようで、皆様に満足のいく食事を提供することができず申し訳ないと言ってました」
   雪子さん・・・。
蛇子「クリハタベナイ。カエルノメダマノパラチンタチョーダイ」
猪吉さん「はい。ちゃんとノートに作り方書いてありますから少々お待ちください」
蛇々丸「茸雲散り行く方を眺むれば ただ舞茸の茎ぞのこれる」
   は?ほんとなんなのこの子。ぱくりじゃん!

<今日のごはん>
PAZOOより
●イカとトマトのシチリア風ソテー
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●岩手直送ムール貝のトマトソース
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●スカンピとマッシュルームのペンネ
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●ピッツァ クワトロフォルマッジョ(4種のチーズのピザ)
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●グラスワイン

<今日の本>
「セブン・デイズ・イン・バリ」田口ランディ
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2006年06月03日

ダイニング・リー

今日は蛇々丸孵化記念パーティー。
蛇子は珍しく髪をアップにしてワンピースなど着て紅天に現れた。
腕にはフリフリの帽子をかぶった蛇々丸が抱かれている。

ハンチ「蛇々丸はさー、生まれた時から歩けんだけどよ、こいつが母親面したいがためにこんな恰好させられてるんだ。俺なんて父親の実感全然ないぜ。なんせ卵だしな。昔買ってた亀みたいなもんだ」
  これは照れ隠しなのだろうか。
  あの男が言っていたように蛇子=イルマタル節が本当だとすると蛇々丸の父親はいないことになる。
  ハンチはそのことを知っているのだろうか。
  私はこの家族に疑念を抱きつつも、パーティーを楽しむため猪吉さんにワインを注いでもらった。

客A「かっわいいわね蛇々丸君。お2人には似ていないみたいだけど」
ハンチ「でもよー、俺達を足して5で割って2かけたような面してるだろ」
客B「それはつまり赤の他人の顔ですぞ。確かに確かに。赤の他人どころか生物学的にもあなたとなんら共通する部分がないように見えますが」
ハンチ「なーに言ってんだよおお前。こいつの声聞いたか?俺の赤ん坊の時そっくりなんだぜ」
客B「ふむ。まだ聞いておりませんでした。何か喋っていただけますかな?」
蛇子「ハナシカケテ」
客B「私が?」
  蛇子うなずく
客B「えーそれでは、ああ、ああ、本日は晴天なり晴天なり・・・」
蛇々丸「本日は停電なり停電なり停電なり停電なり停電なり」
  蛇々丸がそう言うなり店内の全ての電気が消えた。何事いったい!?
客A「何々?なんかの余興なの!?」
猪吉さん「そんなの寝耳に水です」
蛇子「コレ、ジャジャマルヨ」
  電気がついた
客B「なんと!どういうことですかこれは?このお子が『停電停電』と騒いだとたん本当に停電になりましたぞ!」
雪子さん「偶然ですよ。電子レンジと洗濯機と乾燥機とドライヤーを同時に使ったらブレーカーが落ちてしまったようで」
  雪子さん、蛇々丸を睨んでいたような・・・。
私「髪も濡れていないのにドライヤーを?」
雪子さん「カーペットに水をこぼしてしまって、それを乾かしていたんですよ」
  ふーん。

  その後久々に耳が振舞われ、ロシアン餃子で私は見事当たってしまった。七色のきのこなら蛇子みたいにいいこと(?)あるかもしれないけど私がひいたのは幼虫いり餃子。そのためか気分が悪くなり早々に帰ってしまった。

<今日の食事>
新宿 餃子専科ダイニング・リーより
●トマト豆腐サラダ
トマトサラダ.jpg
●豆苗とニンニクの炒め
●エビチリ
●くらげの香味和え
●LEE餃子
●もちキムチ餃子
●いわし餃子
●赤ワインデキャンタ

<今日の本>
「森のなかの海(下)」宮本輝


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2006年06月01日

号外

ついに待望の蛇々丸誕生!
なんと尾びれと背びれがついた男の子。
蛇子が予言したとおり男の子で、出産に立ち会った雪子さんの話によると、生まれた時から言葉を話し、その手には100円玉が握り締められていたそうだ。なぜか昭和64年の100円玉を。
そして初めて口にした言葉は「100円しか持っていない」。

今のとここれくらいしか情報が無いが、また何かわかれば随時お伝えしていくつもりだ。
果たして蛇々丸は何百年間も海を漂っていた法華爺なのだろうか。
尾びれと背びれがついてるとこを見るとその可能性が極めて高そうだ。
posted by pikkumyy at 20:22| Comment(15) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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