2006年05月18日

福はうちV

紅天のスツールに座ってほっと一息。朝は寝坊、昼は仕事が終わらず胃袋はすっからかん。早く雪子さんの料理をいただきたかった。

猪吉さん「今日は少々遅いご登場ですね」
私「ええちょっと色々ありまして・・・」
猪吉さん「ちょっと色々ですか(微笑む)」
  そっと出してくれたのはブラッディーメアリー。
  空きっ腹にアルコールはきついけど、
  こういうしょっぱい味がするお酒だったことが救い。
  あー美味しい!さすが猪吉さんわかってらっしゃる。雪子さんから出さ  れたサーモンの炙り焼きモッツァレラチーズサラダもとーっても美味し  い。まさに生き返った心地。
  モッツァレラチーズをしみじみ味わっていると、扉がすごい勢いで開い  た。私が歩いてきた時は小雨だったのに、今は暴風雨になっているのだ  ろうか。強い風が店内に吹き込んできて、あやうくチーズが箸から飛ば  されるとこだった。なぜか雷が轟き、夏の嵐のような匂いがした。
  
  入り口に立っているのは若い男だった。
  全身雨でぐっしょり濡れ、唇の色に生気がなかった。
  雪子さんも猪吉さんもよほど驚いたのか、しばらく呆然としていた。
猪吉さん「いらっしゃいませ」
雪子さん「・・・いらしゃいませ。どうぞお座りください」
  それでも男は入り口に突っ立ったままだった。
  とにかく早くドアを閉めてほしい。
男「イ・・・・」
  ぼそりと言葉を発したが全く聞き取れない。
雪子さん「あの・・・、なんでしょう?」
男「イルマルタル・・・」
  小さな声だったが今度ははっきり聞き取れた。
  そして男はその場に倒れた。猪吉さんが慌てて男に駆け寄った。
猪吉さん「大丈夫ですかお客さん!?お客さん、お客さん、大丈夫です  
  か!?」
ハンチ「おいおいおいおいおい、なんだってんだよ。
    姉ちゃん救急車!早く救急車呼べって!」
  私もハンチと同じ事を言おうとした。
  しかし雪子さんが真っ青な顔で口元に手をやり震えているのを見ると彼  女も倒れてしまいそうで言葉が出なかった。
  私は咄嗟の判断で店の電話を借り、119番を押した。
  
その後無事救急車が到着し、男は病院に運ばれた。誰か付き添いを、と言われると雪子さんはこう言った。
「この人は私たちとは何の関係も無い人です。この扉を開けたとたん倒れたんです。初めてのお客さんだから彼については何も知りません」
付き添っても役に立てないから早く病院に連れてってほしいと、半分追い返すような感じで救命士に頭を下げていた。なんか様子がおかしい。

  みんな店内に戻ると、客の一人がつぶやいた。
客A「イルマルタルってなんだろう」
   そう。あの男は確かにイルマルタルと言った。
  しばらく沈黙が続いた。それを破ったのは猪吉さんだった。
猪吉さん「大気の娘、処女イルマルタル。大海原に降り立ち、大きな風に身   ごもって、七百年もの間身ごもったままだった・・・」
  雪子さんは今にももどしてしまうのではないかというくらいきつく、
  両手で口を押さえていた。
  その様子を蛇子がぎらぎらした目で見つめている。
  大気の娘イルマルタル。雪子さんはこの言葉に怯えているのだろうか。
  蛇子のあの目つきそしてあの男。いったいどういうこと?
                     
<今日のごはん>
恵比寿 福はうちより
●サーモンのあぶり焼きモッツァレラチーズサラダ
●半熟玉子のピリ辛豚キムチ炒飯
●赤ワインデキャンタ(カベルネシラーズ)
●ブラッディメアリー

<今日の本>
「贅沢貧乏のマリア」群ようこ   



posted by pikkumyy at 21:24| Comment(6) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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